黒岡衛星の1日1枚1言

この"ブログで音楽の話しかしたくない"がすごい!第一位

ムーンライダーズ『a touch of fullmoon shows in the night 』('00)

 

1996年の20周年ライブ(なんか色々あったっぽい)にオーバーダブを重ねて盤にしたやつ。噂に聞いていた各アルバムの一曲めをひたすらやるやつとか、トラブルでえらいこっちゃな「いとこ同士」とかようやく聴けた。時期的には『ムーンライダーズの夜』('95)から『Bizarre Music for You』('96)が出る前くらいの時期だけど、ちょうどこのあたりでモードが切り替わるのかなあ、というのが音でわかる。『最後の晩餐』〜『A.O.R.』のハウスでジャングルなサウンドを引きずっている感じもあるし、一方でここから『月面賛歌』〜『Dire Morons Tribune』のオルタナ路線に舵を切っていく萌芽のようなものも見え隠れする。「スイマー」や「彼女について知っている二、三の事柄」といった初期のギターロック路線曲はテンポを落としているのが最初は意外だったけど、これはこれでかっこいい。それでいて「スカンピン」とか、1stなんかの曲に確かに色付くオールドロック(というか彼ら的には若い頃に実際通ってきたんだけど)の確かな資質がまたずるい。10年代のライブ音源みたいな定番もまだそこまで確立されていない(「Beatitude」とかまだリリース前?)のもあって新鮮な気持ちで聴ける。アーカイブを別にすると、『dis-covered』の次くらいに見かけない音源なので、高くなる前に見かけたらぜひ。当時の全アルバムから一曲めをやっているわけだから、ベスト盤的な最初の1枚としても良さそう。