黒岡衛星の1日1枚1言

この"ブログで音楽の話しかしたくない"がすごい!第一位

山下洋輔トリオ『キアズマ』('75)

 

キアズマ

キアズマ

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衝撃。ピアノ、サックス(ほか)、ドラムというベースレス、ワンホーンの変則的なトリオ編成で当時世界に打って出た山下洋輔トリオのライブ盤であります。山下洋輔ご本人のエッセイなどを読むと演奏のようすが『ドバラダダダドシャメシャダララララグギャーン』みたいな、赤塚不二夫と仲が良かったのも納得の擬音で表現してあるのですがまさにそういう音なのです。シンプルに手数多くまたパワフルなフリージャズ・アンサンブルはただひたすらに圧倒されること間違いなし。パンクもグラインドコアヘヴィメタルすらもうっすら感じさせるようなフルスロットルの演奏はうるさい音楽が好きという御仁であれば万人に、いやエネルギッシュな表現が好きという人全員に薦められるものでしょう。もう50年近く前の演奏なのに今聴いても震えるような感動を得られる名盤です。

Peripheral Vision『We've Got Nothing』('23)

We've Got Nothing | Peripheral Vision

 

カナダはトロントを拠点とするジャズ・カルテットによるライブ・アルバム。以前過去作である『Sheer Tyranny Of Will』のジャケがクッソエモかったのが気になって聴き始めたんですが、いいバンドです。ドラム、ベース、サックス、ギターというやや変則的(ジャズでいうところのピアノレス・ワンホーン)な構成もなるほどといった感じの、アメーバ状に広がるフリーなサウンドを展開しています。フリーとはいってもいわゆるフリージャズ的なものとも違っていて、静的な中にロックもポップもアンビエントも同居するといったような現代的な作風が特徴的です。ライブならではの熱気、といったわかりやすいものよりはどこに連れて行かれるのかわからない静かなスリルのようなものが強いですが、なるほど今様に、それでいて先人たちへのリスペクトも失わずにジャズをやっているバンドといった感じです。おすすめ。

Helicopter『Pan & Ping Pong The Best of Helicopter 1993-1999』('18)

Pan & Ping Pong - The Best of Helicopter (1993 - 1999) - | Helicopter | galaxy train

 

後にAll of The Worldへと発展しサカナクション山口一郎に影響を与えたバンドの編集盤、ということですがこれは面白い。後にAll〜で見せるクラブミュージック的な要素はまだあまりなく、素朴な宅録の中にキラリとセンスの光る脱力ローファイ・サウンドをやっています。このセンスというのが本当に独特かつ世界レベルというかなかなかに類を見ないもので、日本のオルタナティブ・シーンの中でもかなりユニークな存在だったのではないでしょうか。ベッドルームでの表現が当たり前になった今だからこそ当時の非凡な表現に耳を傾けてみるのも大事なんじゃないかと思いました。カセットテープで購入するとボーナストラックが4曲ついてくるのでそちらがお薦めです。

bermei.inazawa (Studio Campanella)『ぼくらのうた (復刻版)』('23)

 

ぼくらのうた復刻版 - bermei.inazawa @BOOTH - BOOTH

 

同人音楽の世界で今なお金字塔とされ、bermei氏の後の活躍によって再評価されつつもずっとプレミア化していたCDがついに復刻、というのが去年の話で、見逃していた自分は再販の機会を伺っておりました。一言で表現してしまえば、みんなのうたポンキッキーズ、童謡、そういったものをエレクトロニカ的感性でカバーしていく作品なのですが、このbermei.inazawaという人のバチギレた才能がそんな非凡な表現に収まるわけもなく。原曲をあくまで大事にしつつもダイナミックなアレンジを加えて再解釈の余地を作る理想のカバー集と言えましょう。最後にオリジナルの「ぼくらのうた」で〆るのもしっとりエモくていいですが、復刻版ボーナストラックの「コンピューターおばあちゃん」で賑やかに終わるのもこれはこれでいいもんですね。同人音楽界の伝説、ダウンロード販売/サブスクは無いそうなのでCDを買えるうちにどうぞ。

The Edgar Broughton Band『Edgar Broughton Band』('71)

 

1971年らしいイカレたジャケットです。中身の方はといえばブラック・サバスもデビュー済みとあってやや地味なブルース・ロックをなんとか売らんかなと精一杯コーラスやストリングスなんかでおめかししてるんですが、それらとサイケの残り香が妙な化学反応を起こして独特の聴き味を醸し出しています。70年代、特に初頭はこういう彷徨い方をしたロックが沢山いて楽しいんですよねー。イカモノ寄りではありますが、日本だとものの本で名盤扱いされたりもしてたりするので聴いてみるのもいいんじゃないでしょうか。

CARCASS『Heartwork』('93)

 

Heartwork

Heartwork

  • アーティスト:Carcass
  • Earache Records
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リヴァプールの残虐王』にして「硫酸どろどろなんでも溶かす」(曲名)などで知られるバンドの言わずとしれた名盤4thです。いわゆる『メロディック・デスメタルメロデスの金字塔なわけですが、ぐちゃぐちゃどろどろゴアゴアの初期からすると随分遠くに来たなという感じです。アイアン・メイデン的な泣きのギターリフといかついデスヴォイスの相乗効果は確かに発明なんですけど、そもそもやっぱ曲がいいのが強い。新しいことをしたから偉い、というのも無くはないですが未だもって歴史的名盤としてあるのはそういうところなんじゃないでしょうか。泣ける。若いメタルファンが聴いてもおお、となるはず。いや知らんけど。名盤なんで一度は聴いてみてもいいんじゃないかと。

J Mascis + The Fog『More Light』('00)

 

More Light

More Light

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この人は変わんないっすね。ダイナソーJr.が解散してからの実質ソロですが基本的にはダイナソーと変わらないビッグマフの轟音ギターとヘロっとした美メロ・ヴォーカルが特徴的なロックです。メタルやハードコア・パンクからの影響を受けつつもシューゲイザーオルタナ、やかましい時のニール・ヤングにも似ており、まあ正直人は選ぶんでしょうけど特にギターという楽器の扱いにおいて間違いなくインディー・ロックの王道をぶち立てた当人の作品ですので、一度は聴いてみる価値があるのではないでしょうか。全部一緒だけど全部名曲だなー。