黒岡衛星の1日1枚1言

この"ブログで音楽の話しかしたくない"がすごい!第一位

the pillows『Another morning, Another pillows』('02)

 

アニメ『フリクリ』でピロウズを知って(にわかと言われたもんですけどもう二十年ですか)、CD買おうけどどれ買ったらいいかわかんないな安くて1番曲数が入ってるやつにしよ、って買ってきたのがこれでした。いやあ懐かしい。要はシングルのB面集なんですけどかーっこいっす。基本的にはシングルA面とそこまで大きなサウンドの違いはないんですけど、より湿度が高いというか確かに表題曲に持ってくるにはちょっとマニアックな楽曲が揃っていて、昔はなんだかよくわからなかったもんですけどオルタナの妙味みたいなものが掴めてからはこんなに楽しいアルバムもないですね。「レッサーハムスターの憂鬱」とか今聴いても泣ける。いわゆるヒットソングは全然ないですけど、カッコいいのは間違いないのでおすすめです。

菊地成孔 / 新音楽制作工房『岸辺露伴は動かない / 岸辺露伴ルーヴルへ行く オリジナル・サウンドトラック』('23)

 

映画を観て良かったのでサウンドトラックも聴いてみました。いやー、かっけえっす。ホラー調の映画に合わせたかのような、ある種の現代音楽的な不気味な響きの中に美しさがある楽曲が中心で、たまにアメリカン・クラーヴェ的なラテン・サウンドが割り込んでくると菊地成孔ファンの僕としてはまんまと燃えてしまいます。今回劇場用にロングバージョンが用意された「大空位時代」もサックスのパートが美しくも妖しく、やはりサキソフォニスト菊地成孔が好きなんだよなあと思ってみたり。なんか菊地成孔スキスキ言ってるばっかですけど、エディットにDAWボーカロイド技術を含む)、AIなどを用いることによって明確なポスト・アメリカン・クラーヴェ・サウンドが提示されたエポックな仕事だと思います。まずは映画を観るのがおすすめですけど、サウンドもぜひ。

DTMP『http://』('16)

Daiki Tsuneta Millennium Parade (DTMP)/http://

King Gnu常田氏によるプロジェクト、millennium paradeの前身というかデモ的な作品集という感じでしょうか。今作に収録されている「WWW」という曲のライブ映像がカッコよくて探してました。全20曲収録ということでヒップホップ・ビートからクラシカルなピアノ、フリーキーなドラムまでがカットアップ的に行き交い、全体的には常田大希という人のアイデアスケッチ集という感じになっています。しかしだからといって聴き応えがないとかそういうこともなく、噴出するかのようなイマジネーションの奔流に圧倒されるばかり。当時すでにSrv.Vinci(King Gnuの前身バンド)が動いていたことも考えるとより私的なプロジェクトとして試行錯誤の段階にあったのかなと思ったりします。一時期はプレミアが付いていた気がしますが、今はわりと入手も容易ですし、常田大希という人に何かしらの興味がある人であれば聴いてみて損のないアルバムかと思います。そうじゃない人はまず何はなくともKing Gnuから。

Prince & The New Power Generations『One Nite Alone...the Aftershow : It Ain't Over!』('02)

 

プリンス初の思い入れもなければ特に好きということもないんですけど、このアルバムの音源はなんかめちゃくちゃ好きです。2002年に発売されたプリンス初のライブ盤ボックスより、ショウ本編を終えたあとに息抜きでやるアフターショウ(?)の模様を収めたもの。緊張感があってカチッとした演奏の本編も素晴らしいんですけど、リラックスしたプリンスとバンドによる長尺のジャムやソロが堪能できるこのアルバムがとにかく好きで。ラフな演奏を褒められても殿下は嬉しくないのかもしれませんけど、まあラフにやっても最高なのには変わらないというのは非常にらしいなと感じます。アフターショウではありますが、ロックが好きな人はむしろここからプリンス入門でも全然ありだと思います。本編ともども必聴。

遠藤賢司『Silver Star BEST OF KENJI ENDO』('75)

 

Silver Star

Silver Star

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ジャケがいいっすよね。不滅の男エンケンの、初期フォークロック時代をまとめたベスト盤です。アルバム『満足できるかな』の印象が強すぎてわざわざベスト盤なんて、という向きも多いでしょうが、それこそジャケに釣られて手元に1枚置いておいてもいいと思います(あとはサニーデイ・サービスのファンとか)。もちろんエンケン入門としてたとえばいきなり『東京ワッショイ』とか『夢よ叫べ』(好きですが)を聴いて困惑するよりいいような気もします。はっぴいえんどはちみつぱいムーンライダーズ)関係者として聴くなら特にこの頃。ジャパニーズ・アシッド・フォーク(?)の名手をアルバム1枚で味わえる贅沢な盤だと思いますのでぜひ。

V.A.『JUSTA RECORD Presents Ska Stock, Tribute to The Skatalites』('00)

 

スカパラ主導で制作された、スカのオリジネイターであるザ・スカタライツのトリビュート・アルバム。メンツを見てもらうとなんとなくわかるかなと思うのですが、スカのみに留まらない幅広い音楽性を持つアーティストが参加しています。Dry & Heavyこだま和文など、ダブやクラブミュージックよりのアーティストが多いですかね。個人的にはエゴ・ラッピンによる歌もの「オルフェのスカ」が良かったです。スカという音楽、それらを生み出した当時のジャマイカのミュージシャン・シップのようなものが時代によってその姿を変えながら今もなお現役でリスナー、オーディエンスを踊らせていることが今作から伝わってくるいいアルバムだと思います。なにげにここでしか聴けない音源も多いし、サブスクもあけてないのでぜひ音盤を買って聴いてください。

Asturias『樹霊 -In Search of The Soul Trees-』('08)

 

In Search of the Soul Trees

In Search of the Soul Trees

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好きですねえ。アストゥーリアス周りですとアコースティック編成のやつが一番好きなんですが、やはりリアルタイムで出た最初の多重録音アストゥーリアスということで感慨もひとしおでした。ミニマルなピアノやアコースティック・ギターといった要素はアコースティック・アストゥーリアスから引き継ぎながらも活動休止前を思わせるようなマイク・オールドフィールド的アプローチやハードロック風のギターも新機軸ならゲーム音楽が主戦場である大山曜氏らしいファンタジックというか物語的な壮大さも併せ持つ、もうなんかとにかくごった煮でありながらも理性を失わない、これも一つのエクストリームな音楽なのかと思わされます。いやしかしかっこいいな。