黒岡衛星の1日1枚1言

この"ブログで音楽の話しかしたくない"がすごい!第一位

inochi『 till we meet again / あした来る人たち』('20)

till we meet again / inochi - Minna Kikeru ~ Good Music Streaming & Download_JP

他の音源はもう少しゆるい感じだった気がするんですが、これはもう完全にキング・クリムゾン発レコメン行きのチェンバー・プログレですね。ほんの少しチンドン的なにぎわいと切なさを感じさせつつも要所でバキバキっと決めていく感じが大変にカッコいい。全体的なサウンドは流動的に聴こえるんですがしかしそれでいて硬軟を行き来する掴みどころのなさがほんとうに何者という感じです。リーダーの皆木さんはyumboのギタリストとしても知られる方で僕はそちらから入ったのですが、確かにyumboからの影響もありつつもっとストレートにロックな音楽性だと思いました。あまりに良かったので他の音源もこの機会に聴き返してみます。おすすめ。

Lard Free『I'm Around About Midnight』('75)

 

I'm Around About Midnight

I'm Around About Midnight

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プログレらしからぬ(?)おしゃれなジャケットです。フランスの電子ジャズロック・プロジェクトによる2nd。同じくフランスのリシャール・ピナス(ex-エルドン)が参加しているからか、シンプルな電子音とサックスの反復の中にもキング・クリムゾン的(というかロバート・フリップ的)な攻撃性を顕すことに成功していて大変かっこいいです。当時の前衛ということで今となっては凡庸かといえば全くそんなことはなく、後発のない発明を時の流れによる臭み抜きによって味わえる最高の状態なんじゃないかと本気で思います。今ですね。お勧めです。

Black Sabbath『Sabotage』('75)

 

SABOTAGE (2009 REMASTERED VERSION)

SABOTAGE (2009 REMASTERED VERSION)

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ビビる大木の愛聴盤でしたかねとどうでもいいことはさておき。オジー・オズボーン時代のサバスではあまり話題にならない印象の作品ですけど、改めて衰えないリフの殺傷力とシンプルなハードロックから抜け出すためのアイデアが噛み合ったいいアルバムです。「Symptom Of The Universe」でのアコギの使い方なんか本当に後のプログレ・メタルと呼ばれる音楽のよう。サバス当人としての芯を失わないままに音楽性を拡張することに成功したアルバムとして、プレ・ヘヴィメタル的な壮大さと邪悪さ、ハードさを併せ持つ音楽としてもっともっと再評価されていいと思います。

Dismember『Massive Killing Capacity』('95)

 

Massive Killing Capacity (Reis)

Massive Killing Capacity (Reis)

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いいジャケです。やっぱり体が芯まで冷えるような夜は心がほっと温まるスウェディッシュ・デスメタルですよね。好みとしては後期のメロディアスが行き過ぎて慟哭みたいになってるあたりなんですけど、この頃の、いかついのに変に隙間があって妙なスウィングを見せるサウンドはちょっと他にないですよね。メイデン風のフレーズが飛び出すと同じ影響元だからなのか陰陽座を思わせるようなところも。印象的なズボッと太い音作りはトマス・スコッグベルグ印ですか。エクストリーム・ミュージックでありながら親しみやすい作風なので、ヒゲダンのルーツと聞いてスレイヤーやチルボドを聴いてみた人が次に聴いても楽しめるのではないでしょうか。おすすめです。

Black Sabbath『Dehumanizer』('92)

 

Dehumanizer

Dehumanizer

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ロニー・ジェイムス・ディオのワークの中で1番好きと言ったら怒られますでしょうかね。なにげにサバスのアルバムとしても屈指に好きなアルバム。グランジなど90年代式ヘヴィ・ミュージックが幅を利かせる時代にルーツであるサバスがきっちり照準を合わせて放った快作です。この時代でよく録れてる音ってどれだけヘヴィであってもどこか風通しの良さがあるもので、後にサバスのドラムをサポートすることになるブラッド・ウィルクが所属するレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの1stも同年の録音で(音楽性こそ違うものの)似たところがあるのではないかと思っています。どうしてもヘヴィメタル・ファンは全盛期を80'sに置きがちですが、ディオもバンドも全然衰え知らずのパフォーマンスを見せてくれています。当時すでにキャリア20年以上のバンドと考えるとかなりのもんでしょう。やっぱこの頃のメタルが1番カッコいいな。

近藤等則『Toshinori Kondo plays Standards あなたは恋を知らない』('15)

 

これはヤバいです!タイトルとジャケットでベタなジャズアルバムなのかと思ってたんですがそこは近藤等則、エレクトロニクスを用いた『近未来のジャズ』をやっています。選曲は本当に誰もが知るようなスタンダード・ナンバーばかりなのですが、シンプルでいて細やかに鳴らされるビートとエフェクティブなトランペットはありそうでないもの。強いて言うならこだま和文のソロは近いかもしれません(ジャンルがだいぶ違いますが)。スタンダード集をこう料理したか!と思わずシャッポを脱ぐ快作です。キャリアとしては晩年にあるものですが『あの近藤等則もスタンダード集を出すくらい丸くなったか』みたいなのとはまったくの無縁。エレクトロニクスにしても風化しない芯があります。ジャズが好きな人もそうでない人も1度は聴いてみて欲しい作品です。おすすめ。

Jens Winther & WDR Big Band『The Escape』('98)

Jens Winther & WDR Big Band – The Escape (1998, CD) - Discogs

これは強力。ジャズのコーナーで見かけてジャケとタイトルだけで買ったんですが大当たり。時期的にもサウンド的にも一番近いのは『カウボーイ・ビバップ』のサウンドトラックで聴けるビッグバンド的なサウンドでしょうか。表題曲はタイトルとジャケ通りの(?)スリリングなチューン。古き良きノセノセ・サウンドのようでいてメカニカルな印象のエフェクトがまた98年という時代を感じさせてくれます。そして3曲のライブ音源。穏やかであり不穏でありの緩急がついた楽曲たちはどれも大曲ながら飽きるどころか先が先が気になるとばかりに聴いてしまうし、最後に収録されている「サイエンス・フィクション」は静かに展開していくフリー風の楽曲。シンプルなリズムの中で渦を巻くようなグルーヴがたまんないです。基本的にあまりビッグバンド・サウンドって好みではないんですけど、これは本当に良かったです。ジャケットを見てぐっと来たら買って損なし。