黒岡衛星の1日1枚1言

この"ブログで音楽の話しかしたくない"がすごい!第一位

King's X『King's X』('92)

 

4枚目ですか。コードなどの専門的なことはまるでわからないんですが、メロディとグルーヴの記名性がただひたすらに強い、一発でそうとわかる楽曲群が個性強でありながらひたすらに心地よいのです。重心は低く、歌心はしっかりと。日本だとなかなかあまりこの感じは受け入れられないですね。僕の大好きなDOIMOIが直系のフォロワーですが、それ以外だとなかなか見かけません。ヘヴィメタルに限らずロック・ポップスに広く影響を与えていそうなものですけれども。Dizzy Mizz Lizzyとかと並んで90年代の至宝です。

KEN ISHII『Inner Elements』('94)

 

おなじみテクノ・ゴッドによる初期作品集ですね。大ヒット・シングル「EXTRA」以前ということでシンプルかつアブストラクトなサウンドは今聴くと逆におしゃれというかクールというか、隙間の多さがかえって聴きやすく時代の風化に耐えうる設計になっていたのではないかと感じます。サウンド的にもデトロイト・テクノからIDMへとムーヴメントが動くまさに過渡期を捉えたものとして大変に貴重なのではないかと。こう、シンプルなビートでウワモノがズレていく快感がありますね。センスでできている音楽として極上の類でしょう。

Popol Vuh『Hosianna Mantra』('72)

 

Hosianna Mantra

Hosianna Mantra

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つくづくプログレにとっての1972年て凄い年だったんだなと思わされますね。ドイツ勢の中ではかなり珍しく、アコースティックかつノンビートなアトモスフィア主体の音楽を奏でている作品です。30年後のポストロックと言われても思わず信じてしまいそうな音の響きだとか、宗教音楽的なところから来るアンビエント感だとかありとあらゆるものがただ美しくそこにある、というのは日本人が聴くからそう感じるというのはあるのかもしれませんが。こういう幅があるからクラウトロックっていうのは面白い。

ムーンライダーズ『P.W Babies Paperback』('05)

 

P.W Babies Paperback

P.W Babies Paperback

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久しぶりに聴こうと思ってサブスクを開いたらなくなっていて、慌ててCDを注文しました。ベテランロックバンド、ムーンライダーズによる自主レーベルを立ち上げての第一作ということですが充実の名盤と言えるでしょう。いや言うてムーンライダーズに駄盤はないのですが。前作『Dire Morons TRIBUNE』からのやや暗い流れもありつつ、カラッとした反戦歌や昭和へのノスタルジーを多分に含んだアルバムの世界観はムーンライダーズならではとしかいいようがなく、それでいてモダンにアップデートされたサウンドの質感は今聴いてもまったく古さを感じさせません。出自がはちみつぱいなんで当たり前なのではあるのですが、ここへ来てオルタナ・カントリー的な進化を見せたのがたいへんに興味深く、また老齢のロッカーが発表した作品としてはあまりに若い。お薦めです。

Penguin Cafe『Rain Before Seven...』('23)

 

いいですなー。オーケストラ時代の環境音楽的なアトモスフィアを保ちつつ、ポスト・クラシカルやエレクトロニカ以後といった今っぽい要素も持ち合わせ、それでいてとてもおおらか。うるさくない音楽が好きな人であれば万人がニコニコ聴けるのではないでしょうか。いろんな民族がネット上で集合して生まれた架空のトラッドみたいな感じ。お薦めです。

カヒミ・カリィ『Montage』('04)

 

「ハミングがきこえる」などで知られる渋谷系歌手という印象の強いカヒミさんですけど、ゼロ年代の彼女は強烈です。特徴的なそのウィスパー・ボイスはそのままに、エレクトロニカ/ポストロック要素を効果的に用いたプロデュース・ワークによって今なお通用する独自の世界観を開拓しています。うーんミステリアス。今なお風化しない表現として、いい意味でいつ聴いてもいい作品のような気がします。流行と縁のない作品てかっこいい。

東京スカパラダイスオーケストラ『トーキョー・ストラット』('96)

 

ソニー時代のスカパラは変なアルバムが多いんですが、中でもとびきりの異色作と言えるのがこちら。全体的にクラブ、ディスコ色が強くスカ感が薄いというか、よく聴けば裏打ちもあるんですがそれが主役という感じもしない不思議なアルバム。カバーの選曲もYMOの「シムーン」にケン・イシイ「EXTRA」(!)といったかなり攻めたものなのでスカパラの中でまず1枚という感じではないのですが、おしゃれなスカパラの中でも特に洒脱な、完全フロア対応作品ということでスカパラというバンドの対応力の高さというか、『クラブのダンス・バンド』という本領が一番伝わりやすい作品なんじゃないかと思います。つくづく名盤。