黒岡衛星の1日1枚1言

この"ブログで音楽の話しかしたくない"がすごい!第一位

L⇔R『Lefty in the Right -左利きの真実-』('92)

 

1stフルということで彼らの趣味が一番ストレートに出ているのではないでしょうか。つまりビーチ・ボーイズ的なグッド・オールド・ロックンロールや美しいハーモニーのポップスということなのですが、このバンドが面白いのは1992年という時代をきちんと反映したアレンジというか、ちゃんとそういった懐かしの音楽を取り入れつつ今(当時)の表現をしていたということなんですよね。出てきた頃は大瀧詠一山下達郎の変名だろこれ、とまことしやかに噂されたというのも納得のクオリティだったり音楽性だと思います。あらためて振り返ってもとんでもないバンドだと思います。再結成の可能性が失われてしまったのがただ哀しい。

井上陽水『陽水ライヴ もどり道』('73)

 

陽水ライヴ もどり道

陽水ライヴ もどり道

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久しぶりに聴きたくなって取り出してきたんですが、なんなんでしょうねこの強烈なアシッド感は。特にアコースティックな前半の演奏はいわゆるフォークソングのブームから出てきたということがわかる一方で明らかに他のアーティストとは違う、グルーヴとしてのヨレみたいなものを感じさせます。ミリオン・セラーとなる代表作『氷の世界』の手前とあって明らかな上昇気流が感じられ、一方で『陽水II センチメンタル』のフォークとロックの中間的な良さも湛えたよいライブだと思います。売れたのでめちゃくちゃ安くその辺にレコードが転がってますが、初めてのアナログにもおすすめですよ。

Coaltar of The Deepers『Breastroke II』('10)

 

みんな大好きなディーパーズ2枚目のベスト・アルバムですけどなんなんでしょうねこのバンドは。根っこにあるのは90年代のオルタナティヴ、特にシューゲイザーを軸とするものなんでしょうけど、一方で嗜む以上のデスメタルとか80's的なエレポップなどのセンスも感じさせて、いわゆる『オルタナっぽい』とか『シューゲのバンド』と呼ばれる連中とは明らかに異質であります。個人的には、いなたいとダサカッコイイのラインを誰よりも理解してそのラインを行ったり来たりする人ら、という気がします。1枚目は初期寄りであることも考えると音楽性が広がっていった中期以降をおさめた今作のほうがバンドのことは掴みやすいかもしれないっす。

Paradise Lost『Host』('99)

 

Host

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英国ゴシック・メタルの立役者による99年の作品ということですがこれは完全にあれです、ヴィジュアル系。出自がメタルの人間がニューウェーブに手を出して、その上ベースにゴスの美意識があって、という、わりとかなり完全なる偶然なんでしょうけど99年ならではって感じのヴィジュアル系ロックです。とはいえたとえばBUCK-TICKとかと大きく違うのはそもそも出自がヘヴィメタルってところで、いくらニューウェーブに手を付けても骨格そのものがいかついあたりここらへんは意外と他に類を見ないかもしれないと思います。そりゃ英国ヘヴィメタルなんでそのもの、と言うには多少ここが違うみたいなところはありますけど、台湾風カステラみたいな気持ちで触れてみると新鮮に聴けるのではと思います。ユニーク。

浜田真理子『mariko』('98)

 

MARIKO

MARIKO

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なんというかこう、ここに引っ張り出してきておいてなんなんですけど、言うことないですね。ただシンプルな歌とピアノ、最低限の弦やコーラスによるサポート。美しい以外に言うことないです。聴く者を刺すような鋭さがある一方でその心の氷を溶かすような暖かさもあり、『うたごころ』という広い宇宙を自由に飛び回っているかのよう。デビューアルバムからこれなんだからおっかない人です。全員聴きましょう。

SOPHIA『ALIVE』('98)

 

ALIVE

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  • TOY'S FACTORY
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ふと思い出して聴いています。「DIVE」が好きで……。いやしかし、はっきり言ってヘンなバンドですよねえ。だからこそ好きなんですが、いわゆるV系の流れともJ-ROCK的ないなたさとも違うようなそのどちらでもあるような、ソフィアというバンドでしか描き得ない個性がここにあります。時代の音から影響を受けながらどこまでもオリジナル。松岡充のヴォーカルはチバユウスケ日暮愛葉(Seagall Screaming Kiss Her Kiss Her)とかと(スタイルこそ違うものの)同じ時代のブルースを感じさせるように思いますがまあ話題になりませんね。いいバンドの初期の傑作です。ただブックオフに転がしておくのはもったいない。

ROVO『CONDOR』('06)

 

CONDOR

CONDOR

  • ROVO organization / wonderground music
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『PYRAMID』に続くアルバム全一曲(三楽章に分けてありますが)の作品ということですけど、昔はのんとなくこの辺の大曲ってゆっくりとグルーヴを練り上げていく序盤をタルいなあと思っていたりしたもんなんですけど、あらためてこう聴き返すとこう、チルからダンスへとグラデーションしていく感じは悪くない、どころかうまくハマると気持ちいいなあと。これもリスナーとして大人になれたということなんでしょか。そして彼らを知る人ならば当たり前かもしれませんが(そういう人はもう聴いてそうですが)終盤の展開はヤバいです。およそダンス・ミュージックというものが持つ最上級のピーク感にシラフでも宇宙まで吹き飛ばされます。いやあ名盤名曲。久しぶりにライブも観たいもんですけど。