暗いというか全体的にどこかどんよりとしたムードのアルバムなんですけど、AIR(≒車谷浩司、渡辺等、佐野康夫のトリオ)としてのバンド・サウンドはここでひとつの完成を見たように感じます。スパイラル・ライフ時代は高音が印象的だったボーカルも低く気だるいを超えたようなダルな粘度があり、ジャズに影響を受けたギタリストとしてもこれまでのアルバムよりわかりやすくクリーンなトーンが中心に鳴っています。曇り空の音楽というか、もやっとした気持ちを作品として結晶化することができたならこういうアルバムができるのだろうか、という作品なのであまり一般受けするポップさではないのかもしれませんが、あらためてこの音が刺さる人は今でも多いんじゃないかと感じました。