ロックになにか他のジャンルをかけ合わせたのが『プログレ』、と乱暴に言い切ることが出来るわけなのだけれども、今作に関してはまるでそういう話ではなく、シンプルに物語としての壮大さが群を抜いている。なので精神的にプログレ、とかなんとか言うことも可能だろうが、ポスト・フォーク・ロックでありドリーム・ポップよりもドリーム・ポップであり、要は他にない音楽だということだ。SFと稲垣足穂、昭和が夢の中で酔っ払って千鳥足で肩を組んでいるような、しかしどこまでも目と喉だけは爛々と輝き張りを失っていないような。あまりのユニークさに新しいも古いもなくただそこにあり、あがた森魚はあがた森魚としてここにある。やっぱりもう少しちゃんと広く聴かれたほうがいいですよ、あがた森魚。