もともとは追悼企画ではなく、タイミング的にそのようになってしまったというかしぶち哲郎のトリビュート・アルバム。ムーンライダーズでは趣味でドラムを叩いていて、ソロだとそれがギターになる、などと嘯いていたように、どちらかといえばソングライターとしての素養が強い彼らしく、こうして様々なアーティストのカバーを集めてみても、ソングブックとして彼の美意識が現れたようなまとまりがあって、一方で参加アーティストの強烈な個性が、ひとつひとつ薔薇のように美しく咲いている。たむけの花束としてはいささか派手だが、かしぶち哲郎という人物に捧げるのだからこのぐらいでなくては。