黒岡衛星の1日1枚1言

この"ブログで音楽の話しかしたくない"がすごい!第一位

MONO『Holy Ground: NYC Live With The Wordless Music Orchestra』('10)

 

2012年にフジロックで観たステージを思い出します。その時も16人編成で弦楽隊が参加しておりスケール感が壮大で良かったんですよね。基本的にはモグワイ・フォロワーそのものなんでしょうけど、一方で非常に日本人的な泣きの美学というか、『悲壮感』をとことんまで振り抜くドラマづくりは本家までも超えて唯一無二なんじゃないでしょうか。2ndの時か何かにメタルの賞を獲ってるのもちょっと納得なんですよね。ペリカンなんかとスプリットを出したりするような、ポスト・メタル的な要素も含みつつ弦楽も交えて純インスト的というか、描きたいドラマが音に尋常じゃなく込められている気がします。いいなあ。

qodibop / olololop『on to tone triangle』('10)

 

札幌のテン年代を象徴するような、と書けばやや大げさに過ぎますか。ポストロック、ポストエレクトロニカ的2バンドによるスプリット・アルバム。なんとなくこう、札幌のハードコア・シーンから派生したその先ということもあって土地特有のエモさみたいなものがあるような気がするわけですが、他のアルバムだともう少しメロディアスだったqodibopもここではストイックな感じ。olololopはそもそもアブストラクトなリズムの歓びを聴かせてくれるバンドなので全体的にシンプルなビートが支配している感じ。ROVOの長尺曲なんかでテンションが上がり切る前のふつふつとしたあの感じです。全体を通してなるほどリズム研究所というところであり、それでいて聴いていて楽しくなるような朗らかさもあってとてもよいアルバムだと思います。ドイツのクラスター(Cのほう)なんかちょっと思い出してみたりもしつつ。おすすめです。

PHONO TONES『PHONO TONES has come!』('12)

 

PHONO TONES has come!

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アジカンの伊地知さんが参加していると聞いて、彼のドラムが好きなので聴いてみました。簡潔に表現してしまうとインストのポストロック、という感じなのですが、ペダルスティールが編成に居ることもあって、ちょっとレイドバック感のあるジャム要素があったり、ラテン/ブラジリアン的なダンス・グルーヴもありつつ。そしてなんといってもドラム。なんでしょうねこの。アジカンの曲やアルバムでも感じていたのですが、『わりといい曲』のケツを蹴り上げて『名曲』にしてしまうマジックを持ったドラムだと思います。やはりいい。全体的にちょっとSpecial Othersなんかを思い出すようなオーガニックなサウンドで大変に気に入りました。おすすめ。

Mouth Of The Architect / Kenoma『Split』('06)

 

Split

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いわゆるポスト・メタル(ポストロック+ブラックメタル?)というやつのバンド2組によるスプリット・シングル。いやシングルとはいえ2バンドとも長尺曲を提供しているため30分近くあります。先手マウス・オブ・アーキテクト、17分かけて壮大なドラマを描き出しています。ポストロックの悲壮感とブラックメタル的な闇(病みかも)がうまく重なり合うかなり気持ちいい大曲で、ちょっとズルっとした引きずる歪みはスラッジーでもあるかも。後手ケオマはマウス〜と違いあまり有名なバンドではないみたいですが、11分、8分と2曲分じっくり燻してくれます。インストなのでよりポストロック寄りで、人によってはこちらの方が聴きやすいかもしれません。通して、最初から最後までバーストするギターの波に溺れるような感覚が味わえるいいシングルだと思います。よき酩酊感。

The Rentals『Return Of The Rentals』('95)

 

こんなタイトルでも1st。Weezerの元メンバーとして有名らしいですが、Weezerあんま聴いたことないのでそれはそれとして聴きました。なんか強烈にピロウズを感じるんですけど、いやピロウズのダルい曲(クオリティが低いという意味じゃないですよ)こんな感じないですか?いや実際にあとはゴーイングアンダーグラウンドとか、ああいうのはもっと直球だったりするんでしょうか。え、めちゃめちゃいいですね。モーグ・シンセがモニョモニョ言ってる中でへろーっとしたボーカルと気の抜けたバンドサウンド(に聴こえるけどたぶんすごい凝ってる)がふわっと鳴ってる感じ、すごく好みです。同時期では2ndもこんな感じなのかしら。ちょっと聴いてみよ。

Radiohead『Airbag / How Am I Driving?』('98)

 

Airbag / How Am I Driving (Dig)

Airbag / How Am I Driving (Dig)

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なんとなくファンアイテム的な作品が続きます。歴史的名盤『OK Computer』のB-Side的なEP。個人的にRadioheadって嫌いではないものの大ハマリしたことはなくて、だから『OK Computer』を聴いてもいかに日本の音楽(特にギターロック界隈)に影響を与えたか、ということばかり気になってしまったりするのですけど、やっぱかっこいいものはかっこいいですよね。この頃は特にロックらしいうるさいギターの響きだとか、一方で美しいメロディラインだとか、グランジの残り香を匂わせながら次の一手を求めるガッツリした実験精神があくまで『魅力的なロック』としてひとつの頂点に達したということなのでしょう。非ロック化、脱ロック化(まさしくポスト・ロック化)していくその後の作品ももちろん魅力的ではありますが、極まった作品、時期特有の充実感はこの頃だけのものだと思います。

筋肉少女帯『レティクル座妄想』('94)

 

レティクル座妄想

レティクル座妄想

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筋少、もっぱら後期のメタリックでありながら空虚な感じ、特に『最後の聖戦』を好んでいるのですけれども、一般的に名盤であり全盛期とされているこのあたりはどうにも音作りが得意じゃないところがあって、そのせいでわりと長らく筋少を避けて通っていたんですよね。まあ久しぶりに聴いても音作りの印象は大きく変わらないんですけど、どう頑張っても真っすぐはならない楽曲にオーケンの世の中に叩きつけられる呪詛と『人を呪わば穴二つ』と言わんばかりに己の醜さへと繋がるこの感じ、ああ筋少だなと思うし、改めて感じ入るものがあります。なるほど『全盛期に出した名盤』という感じ。特にこのときのオーケンの鬼気迫る歌唱は未だに衝撃を失わないというか、ひとつの正解にたどり着いてしまったような凄みがありますね。日本人にとってのブラックメタル的な、と言ってしまうと語弊があるんでしょうけど、底のない暗さが聴けるアルバムだと思います。そりゃ作ってても病むわ。